5億5000万年前の世界最古となる「ほぼすべての動物の祖先」の化石が発掘される
南オーストラリアの奥地で、最も古いもので5億5000万年前のものとみられる化石が発見されました。化石には2mm~7mmという米粒のように小さな生物がひしめいており、化石を発掘した研究チームは「人類を含むほとんどの動物の祖先の化石としては世界最古かもしれない」と報告しています。
5億5000万年前の化石に閉じ込められていた生き物は、発見された地域に住む先住民の言葉にちなんで「Ikaria wariootia」という学名がつけられました。
そして、研究チームがIkaria wariootiaの体の構造を確認したところ、両端の大小が違うことが判明。研究チームの1人でスミソニアン国立自然史博物館研究員のスコット・エヴァンス氏は「これはほんのささいなことのように思えるかもしれませんが、Ikaria wariootiaが前後に区別される体を持っていたことを示しています」と、その重要性を強調しました。研究チームは「Ikaria wariootiaは確認されている中で地球最古の左右相称動物かもしれない」と論じています。
多細胞動物の中で最も原始的な動物は海綿動物(カイメン)です。カイメンには組織や器官はなく、左右の区別がありません。そして、カイメンから一歩進化した真正後生動物は体のデザインの違いによって、クラゲやサンゴなどの刺胞動物、有櫛ゆうしつ動物、そして左右相称動物に分類されます。
左右相称動物は、受精後の胚が三つの胚葉で構成されており、はっきりと体の前後が区別され、左右対称となっているのが特徴。ヒトだけではなく、犬や鳥、虫など、地球上の多くの動物がこの左右相称動物に属します。つまり、今回発見された地球最古の左右相称動物は、人類を含む地球上の多くの動物の祖先といえるわけです。
これまでの研究で、エディアカラ紀(約6億2000万年前~約5億4200万年前)には左右相称動物が登場していたと考えられていましたが、説の根拠となる化石は生物の作った穴の痕跡しか見つかっておらず、エディアカラ紀の左右相称動物そのものの化石が見つかったのは今回が初めてだとのこと。
さらに研究チームは、生物が通った穴の痕跡を分析することで、Ikaria wariootiaが筋肉をミミズのように収縮させ、浅い海洋の堆積物の中を移動した可能性を示唆しています。以下の画像はIkaria wariootiaのイメージ図。
エヴァンス氏は「Ikaria wariootiaは巣穴から食物と酸素を求めて出てきたと考えられます。これはつまり、Ikaria wariootiaには周囲にあるものを感知する能力を獲得していたことを示しています」とコメントしています。
0コメント